あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ



ゆらゆらと揺すられている。

夢の続きがずっと続いているのかと思った。

「誰?」

「起きなさい」
誰かが肩に手をかけてる。温かい手。

「やっと来てくれたんだ。待ちくたびれて死んでしまいそうです」

私は、その手を引っ張り込み、ぎゅっと胸元で抱きしめた。

「んん……」
リアルな夢。

本当に腕を抱きしめてる感覚がある。
課長の腕って割と筋肉がついていてしっかりしてる。

「おい、何やってる」
何やってる?

昨日から散々、この胸にいろいろしたくせに。

恥ずかしがってるの?
しょうがないなあ。

私は、声がした方に腕を伸ばし、待ちに待った人の体をぼんやり見つめる。

少し体を起こして、ずっと会えなかった恋人のように、相手の姿めがけて腕を巻き付ける。


柔らかな髪が鼻先に触れる。
ふわっとしてる。思ったより柔らかい。

いい匂い。
本当にリアルだわ。髪に触れる感覚。
匂いまで感じるなんて。



やっぱりこの人だと思う。
この人に抱かれたい。


「来てくれて、嬉しい」

「おい、何するんだ」
私が力いっぱい抱きついたら、彼は、バランスを崩してベッドに横になった。

「栗原?」

私が課長の上になって、彼の驚いた顔を見下ろしている。

「んん……」
返事のかわりに、おはようのキスをする。
昨日から、何度も重ねた愛しい唇に触れる。

ピッタリ重なり合った体がもぞもぞ動くたびに、彼がなんか言っている。

私は、彼が言ってることなんか気にしないで、ずっと形のいい薄い唇を見つめてる。

「静かにして。騒いでるとその口、もう一度塞ぐから」
今度は、彼の上に覆いかぶさってさっきより熱っぽくキスをする。

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