あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「栗原、お前、誰かと間違えてたのか?」
少し冷めたコーヒーを口にしながら課長が言う。
「間違えてません」
課長は、じっと私の顔を見ている。
「なかなか起きてこないから、起こしに来ただけだ」
洗ったままの髪。明るい色でふわっとしてる。
そのまま、ワックスだけで整えばいいのに。
その方が、断然男前です。
「起こしに来ただけ?私まだ。完全に起きていませんから、もう一度起こしてください」
誰かと間違えたことにしたいなんて聞かされて、私はへそを曲げた。
そういう風に仕掛けてきたもは、課長の方だ。
「栗原、ふざけてないで、食事しなさい」
本当に悲しくなってきた。
「ふざけてなんかいません。もう一度キスしてほしいのは本当ですから」
ギロッて睨まれる。
課長に睨まれたって、もう怖くない。
「大丈夫だ。このことは、国崎に話したりしないから」
国崎君?どうして彼が出てくるの?
「国崎君は関係ありません」
「あいつと付き合ってるんじゃないのか?」
「付き合ってなんかいません」
「そうか」
「そうかって、それだけですか?」
「部下の恋愛には口を出さない主義だから」
「ご自分が、部下の女性を好きでもですか?」
「好きな女性はいない」
「好きじゃなくても、キスぐらいできるでしょ?」
「栗原」
「とにかく、私は誰とも付き合っていません。それから、私、課長が好きです」