あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ



彼は、空を仰ぐように言う。

「謝るなよ。これでも感謝してる。主任に拾ってもらって、やりたい仕事ができるようになって。俺、君には本当に感謝してるんだ」
本当に、いい人だ。

「うん」


「だからさあ、コンピュータのやったことだなんて自分を卑下するなよ。こうしてお前のおかげで助かったと思ってる人間もいるんだから」
涙が出そう。

「そうかな」

ごめん、気遣ってくれてるんだね。


「ありがとう」本当にうれしいよ。


これ以上あったかいこと言われると、泣きそうになる。


「まあ、でも、藤原課長の後釜は俺だけどな」


「うん」
それは、すぐにでも変わってあげたいよ。


「じゃあ、言いたいことはそれだけ。頑張れよ」
彼は、一度も振り返らずに、歩いて行った。



私は、彼の姿が見えなくなるまで、その場に立って見送った。



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