あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「なに、その一本指打法。初めて見たわ」
通りがかりに、国崎君に笑われた。
ちなみに。両手で一本ずつだ。
確かに笑える。
「うるさいわね。人が、一大決心して取り組んでるのに」
彼は、隣の椅子を近づけて、モニタをのぞいた。
「一大決心って程のことかよ。貸してみ」
「うん」
「これ、ただ修正すればいいの?」
「うん。詳しいことはここに書いてあるから」
恵麻ちゃんから預かった書面を、国崎君に渡す。
じいっと見る彼。
「何、これ。課長のじゃん。なんでお前が……ちょっと待って。何これ」
「どうかしたの?」
「ビッグデータによる人事管理の高度化って……」
「どうかしたの?」
明らかになんかある顔だ。
ぶつぶつ言いながら、彼は元の資料をひったくって読みだした。
同じ資料を見てたのに、国崎の反応と自分の反応の差に激しく嫉妬する。
頭の中身の差は、歴然としている。
彼は、私が気付いてないと思たのか、
「いや。何でもない。それよりこれ、恵麻の字だろう?」
といって話をそらした。
「うん。私今彼女の手伝いしてるの」
「なんだよ、それ。まあ、それより、十分間で済ませてやるから、空いた時間で飯でも食おう」
「うん」
よかった。国崎君普通だ。普通にしゃべれる。