あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

食事の後、私は、国崎君と別れて会社に戻った。

国崎君が結構がんばってくれたけれど、作業はまだたくさん残っていた。
やっぱり、家に帰って少しやっておこうと思った。

パソコンを立ち上げ、データをコピーする。


少しの時間だから、電気も最小限しかつけない。

一カ所だけ、蛍光灯のスイッチを入れ、薄暗い中一人で作業する。




バタン、とドアが静かに開く音がした。


課長が入って来たのが分かった。


「遅かったんですね。今帰りですか?」

モニタを見ながらだったし、声も大きくなかったから聞こえなくても不思議じゃない。


でも、課長は、いつもと様子が違った。
さっと倒れ込むように椅子に座ったのだ。

普段、こんな姿を見せる人ではなかった。

疲れたっていう姿も、見たことがない。

それに、人が目の前にいるのも分からないなんて、この人にとっては考えられないと思った。

「課長?」

課長の変わりように気が付かない口調で、緊張した声にならないように気を付けて。
さっきより大きい声で言った。

「課長!」
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