あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
思い切って、彼の首に抱きついた。

最初は、彼もびくって体を固くしたけど、拒絶することはなかった。

「ダメだって」

「うん」

「こんなふうにされたら……」

ようやく体を私の方に向けて、頭を預けてくれる。



「苦しい時って、誰かにこうしてもらわなかった?」
抱きしめるようにして、背中をさすってあげる。

「いいや、あんまり。記憶にない。自分が苦しい時って、それを人に見せちゃいけないと思ってた。だから……」

私は、腕に力をぎゅっと入れた。
抱きしめてもらえなかっただなんて、普通じゃない。

「もし、初めてだったら、いい機会だから試してみて。きっと落ち着くと思うんだけど」
私は、遠慮がちに肩に置かれていた彼の手を取って、両手で軽く包む。

「事態は良くならないかもしれないけど、ひどい気分は少しは和らぐと思うの」

「ああ」

「どうして欲しいか、言ってみて。背中をさすってあげる?頭を撫でてあげる?」



「キスしたい。君の体すべてに」


「だったら、そうしてください」
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