あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

知的で物静かな人だから、女性を抱くときも優しく包むようにするのだと思った。


彼の腕が腰に添えられ、熱を帯びてくるのが分かる。

メガネが外された顔は、きれいに整っている顔に思わず手で触れたくなった。


伸ばした手を捕えられ、ソファに押さえつけられる。

彼の熱っぽい視線が自分に注がれている。



「ダメだって言ったのは、俺の方なのに、ごめん」

どうして謝るの?謝ってほしくなんかないのに……

そう言うつもりで口を開いたら、キスで唇を塞がれた。


彼は、私の反応を待ちきれないみたいに、情熱的なキスを何度も何度も求めてくる。


「待って……お願い」

激しくなるキス。

着ていたサマーニットの下のシャツを引っ張り上げ、あらわになっていく肌に、彼が唇を当てて直にキスをする。

そうして、身につけているものがなくなって、体の隅々までキスをして味わうと、今度は、ギュッと力強く抱きしめられた。

いきなり彼に包まれて、気が遠くなりそうになった。


水の中で、溺れるまいと必死にもがく人のように彼は、私のことを抱いた。


こんなに人肌が恋しいのに。
そばにいて欲しいって一言が言えない人。

彼は、女性を抱くことになれていないわけじゃないのに。
彼の不器用さが愛おしかった。

謝ることなんかないのに。

こうしているだけで、今にもあふれるばかりの感情で満たしてあげたいと思う。
何かしてくれたことに対する代償じゃなくて。

ほんの少し、キスをしてくれるだけで、私は幸せだと思えるから。


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