あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「人から褒めてもらったことがないんだ」
ベッドの中でまどろんでいて、最初は何のことかわからなかった。
「褒めてもらったことがない?どうして?そんなに完璧に何でもできるのに」
冗談みたいに言う。
「出来るのが当たり前だと思われてたから」
「そうね。よくあなたのこと知らないけど、パッと見るとそんなふうに見えるわ」
「でも、上手く行かない時もある」
彼の大きな手に、自分の手を重ねる。
「それはそうよ」
「苦しいって言いたくなった時もあった。でも、困ってる顔をすると、みんな俺らしくないっていうんだ」
「何でもできると思われてるのね」
「でも、実際はそうじゃない」
「うん」
「うんって。認めるの?俺は、出来ないって言ってるんだよ」
彼は、驚いて私を見る。
「出来ないことだってあるに決まってるじゃない。人間だもの」
「でも、周りはそうは思わない」
「うん」
「俺ならできると思ってる」
「出来なくてもいいじゃない。頑張ってもできませんでしたって」
私は、あくびを噛み殺しながら言う。
彼のおかげで、ほとんど寝ていないのだ。
「そんなわけにいくかよ。多くの人の人生がかかってるんだ」
もう一度抱きしめて、背中をさすってあげる。
「頑張っても失敗したら、仕方がないじゃないの。それに、あなたの他、誰もできる人がいないんだから。それでだめだったって誰も責めたりしないわ」
多少めんどくさいところもあるけれど。
これまで、人を頼ったことのない人なのだし、焦らなければ大丈夫だろうと思った。