あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
不器用な恋
昼休みが終わるころ、月島さんと別れた。
月島さんも、東京にいる間に、済ませなければいけない用事があると言って、すぐに帰っていった。
私は、オフィスに戻り、出先から戻って来た課長を呼び留めた。
「あの……お話があるんですけど」
「今日、仕事が終わったらでいいか?」
彼は、顔を上げて言う。
「はい」
「じゃあ、適当に声かけて」
「はい」
課長が席を外してから、国崎君が、大丈夫かと話しかけてきた。
私は、大丈夫だと彼に伝えて、
「どうもしないって。元の職場の上司がちょっと聞きたいことがあるって、訪ねて来ただけ」
「人事のことか?」
「ん……でも、こっちから話せることって、ほとんどないから」
「まあ、そうだけどな」
「噂になってるのかなあ。何か始まりそうだっていう雰囲気は、みんな感じてるみたいだけど」
国崎君も何か感じてるのかな。
「課長に聞きたいことって?」
国崎君が心配してくれてる。
「えっと、ごめん。個人的なことなんだ」
彼は優しい人だ。何かと気にかけてくれる。
甘えるわけにはいかない。
「そっか。俺の出る幕じゃなかったな」
いつもそんなことばかりでごめん。
心配してくれるのは分かってるんだ。