あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

「入って」

彼は、ドアが閉まるより先に後ろから抱きしめられた。

ギュッと温かい胸に引きよせられて、めまいがしそうになる。

「希海?顔、よく見せて」

向き合って、お互い見つめあう。

数秒だって、無理だ。

視線をそらして、彼の腕から逃れようとする。


見つめあってしまったら、距離を保ってなんかいられない。

ほんの少し触れただけで、私の気持ちは、彼に通じてしまう。

「逃げるな」
顔を上に向けられ、強引に唇を奪われる。

ほんのわずかな距離でも、近づいてしまえば、お互いをお求めあう力が強すぎて、磁石のように引き合う。

そして、キスが永遠のように続く。


もっと感情を表に出して。言いたいことを言って。
そういったのは私だ。

一方通行じゃなくて、思いが通じるってこんな幸せだったんだ。

この人と一つになりたい。

体だけじゃなくて、心も。

そう伝えたいのに。
感情を言葉に出してというと、同じ意味には伝わらない。

しゃべっているより、キスしてた方がいい。
その方が、相手に何倍も伝わる。


服を通してお互いの存在を確認するより、一つになりたい。

困ったことに、相当あなたにいかれてるって自覚してる私より、好きじゃないってあなたの方が何倍も私を欲しがってること。

あなたが、そんなに私を欲しいと思ってくれるのは、愛情から?それとも欲望だけ?

瞳の中から探ろうとしても、あなたの考えてることって、複雑すぎてわからない。

こんなに求められたら、幸せだって思えばいいのに。

そう思えないのは、どうしてだろう。





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