あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「君といるとおかしくなる。好きだとか、愛してるとか、今まで感じてきたのと全然違う感情なんだ。後から後からわいてくる。一切、コントロールが効かない」

熱を帯びた熱い目で彼が言う。

彼が、私を抱えるようにして寝室に誘う。

体も細い方だと思ったのに、本気を出すといとも簡単に私の体を持ち上げる。


「キス、どうされるのが好きですか?」

彼が、また、自分の周りに壁を築こうとしている。

少しは、分かりあえたと思ったのに、そうでもなかったのかな。

私は、彼から少し離れて、愛しい彼の顔を見つめる。

「どうされるって……君に触れてるときは、神経が高ぶって、君に何かしてほしいなんて考えてる余裕ないさ」
彼は、感情を押さえて、静かに言う。


「じゃあ、どうしたら課長に喜んでもらえるんですか?課長は、私にどうして欲しいですか?」
彼は、うなだれるように下を向くと、優しく抱き寄せた。

「君は、まったく……何てこと言うんだ。せっかくの俺の努力、まったく無駄じゃないか」
言葉とは、裏腹に彼は、これ以上ないほど、私の体をギュッと抱きしめる。


「愛してるっていうのと違うって、私のこと、愛してるわけじゃないってことですよね」


「希海……違うって」

「だったら、こうして私を抱いていることは、好きでいてください。私、何もいりません。だから、こうして抱いていてください」

彼は、あっという間にベッドに押し倒した。

「君を抱きたいっていうのは、そういうふわっとしたのじゃなくて、いてもたってもいられない、強烈な感情だから……」
彼に激しく唇を奪われ、首筋にも熱いキスを落としていく。

「手に入れたいってこと?」
彼の長くてしなやかな指が、もどかしそうに、ボタンを外す。

手が止まって、じっと私を見つめる。


「理由なんてどうでもいい。早く脱いで。焦らすなよ」
着ているものを、どんどん奪われていく。

なんか、悲しくなってきた。

「課長、好きです……」

言葉は役に立たなくて、感情は欲望と区別がつかなくて。

大事なことは、宙ぶらりんのまま。

「ああ、もう!だから、そんな目で見るな。こんな時に、課長はないだろう。今、君は俺の部下じゃない」

「ゆう……裕二さん?」

「もう、手遅れかも知れないな。もう、とっくに降参してるよ」
彼は、笑って私の手首に引っかかったシャツを引き抜いた。



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