あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ



課長……

言葉が信頼できないって時、私はその人の行動を気にしてきた。


藤原さんとは、本当に必要なこと以外話さなくなっていた。

目も合わさないから、早速、国崎君が変だろうって気にしてくれてる。

これは、わざと課長の方が私を避けているように思う。

あまり、熱を上げられると困る。
会社を去るとき、別れなければいけないから。

一時的な感情に流されても、自分の信条は曲げない。
そういう人なんだろう。

彼の言う通り、私が勝手に夢中になって、後を追いかけただけなのだ。

課長は、そのことに、気付かせようとしているのかもしれない。



ランチタイムに宮崎さんと国崎君で三人で出かけて、無理してお腹に詰め込んだら吐きそうなくらい食べてしまった。

どうやら、上手く行かなくなると、私は、胃袋も神経にも、無茶させたくなるのだろうか。


帰って来て、午後イチの会議だなんて、すっかり忘れてた。
眠くなるなっていう方が無理だ。


「恋より、キャリアかあ。いいねえ。何か意味がありそうで」
もう、やけになっていた。

社内向けのセミナーの案内を出すのに、キャッチフレーズを考えていた。

「ダメです。センスなさすぎです。主任」
恵麻ちゃんが早速突っ込む。

ダメだ。
全くダメだ。

何もやっても、手に付かない。

たいていのことなら、負けないで前向きでいられるんだけど。

一度、調子が狂うと自分でもどうにもできないらしい。


やっぱりあんなエリート様の考えることは分からない。

「主任、ちゃんと聞いてますか?」

「ん、聞こうとは思ってるよ」

「ふざけないで聞いてくださいってば」

「だから、私の意見ちゃんと言ってるってば」

吉沢さんが入って来た。


「キャッチコピー決まった?」
いつにもまして、爽やかな吉沢さん。


「いっそのこと、花より団子とか」

「それは、面白いけど、希海ちゃんどうかした?」

「どうもしてません」

「そう?さっき裕二にもあったけど、あいつも同じように考え込んじゃって。珍しいなと思って」

「あれで、考えてるポーズだったんだ」
恵麻ちゃんが突っ込んだ。



< 182 / 240 >

この作品をシェア

pagetop