あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ


取りあえず、様子を見ることにした。

私に何か言いたいことがあれば、自分から話すだろう。

「栗原さん、お腹減ってる?飯にでも行きますか?」

「そうね」
さすがにコーヒー一杯で、ひざを突き合わせって訳にはいかないか。

この天野君は、一日中机に向かってる管理部門よりも、こうして人と接する仕事の方が向いてると思える。爽やかだし、人当たりも良さそうな好青年。パッと見て営業で何が問題なのっと思う。

「お酒が苦手とか?」

「いいえ。これから一緒にお酒飲むつもりですよ。栗原主任」

「じゃあ、何が問題?」

「お店についてからにしましょう。でも、嬉しいです。そうやって、俺の事考えててくれたんですね」


「あ、危ないですよ」

目の前の信号が変わったのに、他のことに気を取られて、先に進もうとした私の肩を抱いて止めた。

天野君は手を離さず、抱き寄せる仕草をしたので、私は彼の腕を振りほどいた。

「ありがとう。もう大丈夫ですから」

「主任って、背高いんですね」

「うん。そう」そういう彼も十分高い。

「だから、ヒールの高い靴とか履かないんですか?」

「そういう訳じゃないけど」
仕事でずっとスニーカーはいてたから、かかとの高い靴が苦手なだけだ。

「今度、履いてきてくださいよ。俺その方が好きです」

「そう、考えとくわ」

「是非、そうしてください」

気を取られて歩いてたせいか、また何でもないところで躓きそうになった。

今度は、何もしないで普通に立たせてくれた。

「本当に危なっかしい人ですね。でも、ハイヒール履いてみてくださいよ。そうしたら顔の位置がちょうどよくなる」
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