あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「渋谷の駅ってこんな風だったのね」
巨大な迷宮のような駅に、驚いた。
彼が駅で待ち合せようと言ったときに、約束しないでよかったと思った。
天野君が、興味を持ったのか顔を上げた。
「渋谷に来たのは久しぶりですか?」
「久しぶりじゃなくて、4月に東京にやって来たの。それまでは北関東にいたの」
「驚いたな。ずっとこっちじゃなかったんだ」
「うん」
背が高いせいで、田舎者扱いされていない。
そういうのは、いいところだとと思う
「じゃあ、渋谷の駅に来たのは、初めてだったんだ」
「駅の工事の後はね。これでも、駅の外に出ないだけで毎日駅を利用してるもの」
「本当に?毎日通っていて、素通りなの?」
「落ち着いたら、見てみようかなって思ってたの¥けど」
「後で、案内するよ」
店は全く分からないからとお願いして、天野君について行った。
雰囲気のいいしゃれた内装のお店で、デートに行くような店だ。
「いい店ね」
「うん、俺は、学生からずっとこっちだから」
「そうだね」さりげないし、スマートだし。都会の人って感じだ。
「それよりねえ、こっちには一人で来たの?」
「当たり前じゃないの」
「彼氏、向こうに置いて?」
「あのねえ、天野君?私の個人的な話をしに来たんじゃないでしょ?」
「はい。分かりました。取りあえずビールでいいですか?主任」
「うん」