あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
総務は、どのあたりかなとフロアを見渡した。

こっちから出向く前に、すでに向こうからやって来たみたいだ。

プリントされた紙を手に持って、同い年くらいの男性と思われる人が、怒って乗り込んで来た。


「ちょっと、誰?こんなに印刷したやつ!」凄い剣幕だ。


私は、恐る恐る手を上げる。

「すみませんでした」


男性は、出力された紙を突っ返してきた。

彼は、トレンチコートの袖をまくり上げ、花柄のミニ丈のスカートの私の格好を見ていった。

「あんた、新しいアルバイト?」

「はい」というしかない。

そうだ。
うっかりしてた。
コート着たままだった。

これは……
アルバイトだって名乗ったて、変な人だ。

主任でっす。なんて言ったら、説教づけにされて殺されそうだ。

適当に誤魔化したけど、多分大丈夫だろう。総務の人だし。


彼は、恵麻ちゃんの方に振り返って言う。

「おい、恵麻プリンタの使い方くらい躾けとけ」と、後ろからついてきた恵麻ちゃんにまで、怒りをぶつけた。

「はい。国崎さん、すみません」
恵麻さんは、はっきり顔に出して笑ってる。


まあ、朝から、3人に会って、3人ともウェイトレスとかアルバイトにしか見えないのは問題ですが。

「ごめんなさい」私も一緒に謝る。

「謝る暇あったら、印刷キャンセルしろよ!」


「はい。すみませんでした」

バカ丁寧に頭まで下げると、彼はそれ以上文句は言わず、最後にぎろっと、にらみつけて帰って行った。

恵麻ちゃんは、彼が去って行っても笑ってる。
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