あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
何がおかしい?恵麻!!

「すみません。印刷先が間違ってましたね」恵麻ちゃんが謝った。

私も、例え心の中であろうとも、呼び捨てにしたことを詫びる。

「ごめん。私も、途中で気が付けばよかった。もう直しておいたから大丈夫です」

私は、恵麻ちゃんにもう一度謝る。


「それにしても、国崎さん、完全にうちの主任のこと、アルバイトだと思ってますね」
面白がって笑ったのは、そっちか。

「はあ。そのうち機会があったら、訂正しておきます」
業務で関係なければ、彼にどう思われても、私は気にしない。


「この服装がよくなかったのかな」
呟きが声に出た。

「なんで、そんな目立つ格好に?」

恵麻ちゃんは、そんなことないよと、気を使ってくれる気は、まったくないみたいだ。

「そんなに目立ってるかなあ」
と寂しく言う。

電車の中では目立たなかったけど、ここエビスヤ本社の中では、カジュアルすぎた。

お葬式の参加者の群れ中に、迷い込んだみたいに目立っていた。

彼女は、信じられないって顔で私を見た。

「大丈夫ですよ。目立ってもいいんじゃないですか?」
そう思ってないくせに、恵麻ちゃんは適当に答える。


彼女が、頭の私の上に視線を移す。


「何が大丈夫なんだ?」


声の主は、若干苛立った声で言った。

聞き覚えのある声だ。


ああ……顔見なくてもわかる。

絶対、さっきより機嫌が悪そう。

「こんなところで何してる?」

恵麻ちゃんが、とうとうこらえきれず笑い出した。


「課長?お知り合いですか?」


「課長が????こんな……」


「若造で悪かったな」

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