あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「それより、こんなところで何してる?」
私は、考えた。

こんなところで、っていうのが問題なのか?

それとも、何してるってい方が問題なのか、どっちから答えたらいいんだろう。

取りあえず、声の主に向き直り頭を深く下げた。


店舗でも、どこでもクレーム客には嫌というほど対応してきた。
だから、怒れるメガネの一人くらい何でもない。

「俺に謝っても意味がない。顔あげて」

「はい」

顔つきがシャープで、すっきりしててとてもきれい。

顔がすっきりして見えるのは、髪をぺったりと撫でつけるようにまとめてるからだ。
とても触ってみる勇気はないけど。

どちらかっていうと、ハンサムって言っていいと思う。

上品な明るいグレーのスーツをきっちり着こなしてる。
つけられた折り目以外のシワなんか、一つもなさそう。

きっとその辺の安売り紳士服店では絶対に買わないんだろうな。

メタルフレームのメガネに、明るめのブラウンの髪がまとめられている。


肌の色は本当に白くって、さっき会った時にも思ったけど、きめも細かそうなきれいな肌。

いいな。あんなふうになりたい。


でも、残念ながら眼鏡の奥の知的な目は、私のことをさっき追い払ったのに、また戻ってきやがった、町のごろつきみたいな目で見てる。

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