あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

終業時刻になって、帰り支度をしてさっさと会社を出ようとしたら、ロビーで国崎君が待っていた。

「もう帰るの?早かったな。ちょうどよかった。ちょっと時間とれる?」

ここは、一階のロビーの割と目立つところだ。

今日はちょっと。

そう言って、よっぽど断ろうかと思った。

でも、断ってしまうのは、もったいない。こんなチャンス滅多にないし。

断る理由って、プリンが食べたいっていうだけなんだけど。

今日こそは、渋谷のデパ地下に行って、ありったけのプリンを買いあさろうと思ってた。

何せ、外が暗くなっても課長が、机から離れない。

仕事が山積みの部下である私は、デパ地下が開いてる時間に、家に帰りたいなんて、いいだせなかった。

早めに切り上げようと思って、居酒屋で飲みながらっていうのは止めて、会社の近くの暇そうな喫茶店に入った。

レトロな昭和って雰囲気だけど、感心したことに、プリンもメニューに入ってた。

私は、大盛ナポリタンを注文した国崎君の横で、プリン一式、カスタードプリンから、プリンアラモードまで心置きなく注文した。

食べたかった、有名店の味じゃないかもしれないけど、こういう雰囲気で食べるのもよい。


「キモ。お前、本気で飯の代わりにそんなもん食べるの?」
国崎君は、顔をしかめて言う。

別にいじゃないですか。何食べたって。


「後でサンドイッチも注文しますって。でも、味を比べるならプリンを先に食べないと。味が分からなくなりますから」

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