あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「海外事業に力を入れようと思ってたら?」

「進出先で活躍できる人材の育成を育成するか、採用しなければならないんだ」
なるほど。彼の説明は、本より分かりやすい。

「その通り」


国崎君は、カウンターまでお水をもらいに行った。

その際、テーブルに置かれたままになっていたプリンを一口食べる。

生クリームとサクランボが乗ってる、見た目は、普通のカスタードプリンだった。

でも、味は普通のものと少し違う。ひと工夫も、ふた工夫もしてある。

生クリームかなあ。
クリーミーでとてもおいしい。

私は、戻って来た彼に言う。
「すごいな、国崎君って、本当に地道に勉強してるんだね」

「うん。俺はさっき言った中の福利厚生、労務をずっとやって来たんだ。
仕事が嫌なわけじゃないけど、同じことばかりだと経験が足りなくなる。そろそろ違うことも覚えたいんだ」

何気なく言う。

「ふ~ん。でも、ちゃんとそういうこと上に話してる?
違う仕事がしたいってだけじゃ、伝わらないよ。こんなに熱心にやりたいって思ってるなら、総長にでも直談判すればいいのに」

「総長って、総務部長のこと?」

「そう」

「そんなことできるかよ」

「どうして?」

「いや……だって、熱意が間違って伝えられたらどうするんだよ」

「そんなもん、どうしてわかんないんだよ、バカって言ってやればいいじゃないの」

「はあ?」

「そうだ、それこそ人材開発の課長に直に言えばいいじゃないの」

「どうして急にそういう話になるんだよ」

「資料に書いてあったでしょ?
モチベーションを上げるには?
働く人間の要求が、満たされないといけない。
そう言って触れ回ってる部署が、真っ先に無視してどうするのよ」

「分かったって。お前、頼むから先走って、変なことするのは止めろよな」

「私が課長に進言しようか?こんな近くに優秀な社員がいますって」

「だから、今、止せって言ったばっかりだろ?」
< 63 / 240 >

この作品をシェア

pagetop