あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
駅に近い、普通の居酒屋でいいと彼が言った。

「ええっ?それじゃ、全然、お礼にならないって」
あんなに働いてくれて、お礼が居酒屋じゃ割に合わないよ。
と何度も言ったんだけど、国崎君は、いいからと言って聞かなかった。

「お礼するなら、宮崎になんか買ってやれよ。俺のことは、いいから」

「うん、そうする。今日は、本当にありがとう。大助かりだった。だから、お腹いっぱい食べて飲んでよ」国崎君のお礼は、別に考えるか。

「おう。じゃあ遠慮なく」
国崎君は、男らしく大ジョッキで豪快にビールを飲む。

国崎君は、さっぱりした性格で、男らしい
タイプだ。
筋肉質な体をしてるから、何かスポーツをやってたんだろうなと思った。

国崎君から、宮崎さんのことを聞いた。

「あいつ、今あんなに落ち着いて見えるけど、結婚する前大変だったからなあ」

「そうなの?」

「経理で宮崎っているだろう?」

「えっと……」

「お前とおんなじ主任だよ」

「ごめん、私、フロアの人間関係まだ頭に入れてない」

「そうだよな。お前はそういうやつだ」

「それで?職場恋愛で大変だったんだ」

「こういうのは、いい時はいいけど、上手く行かない時は近くにいる分大変だからな。
でも、ああして旦那が一番って、嬉しそうに帰って行くのを見ると、落ち着いてよかったって思うよ」
彼は、宮崎さんのことを嬉しそうに話す。

「もう、お兄さんの心境だね」

「そうかもしれない。同期で友達付き合い長いからな」

「ん」

「あれ?お前、大学はこっちなのか?」

「違うよ。私が出たのは地方の短大だよ。だから、東京に出てきたのはこれが初めて」

急に国崎君の顔色が変わる。

短大出っていうのが、そんなに気になるのか?

「ええっ?短大卒なの?マジか……」
彼は、本気で戸惑って頭を抱えてる。

国崎君の驚きように、ちょっとイラついた。
出身校なんて、どうだっていいじゃないの。

「なによ」

「と、年下?ちょっと、待って。信じたくねえ。ショックでかいなあ。俺、年下の女の子に負けたのか?」

「悪かったわね。低学歴で」

「違うって。そういう意味じゃない。だって、格好悪いだろ?いざって時に、相手の方が先に出世してるって」

「何?いざって時って」

「いい加減、察しろよ。バカ」
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