あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

「栗原?」


「はい」
帰りがけになって、課長に呼ばれた。

「今日、少し時間あるか?」

「はい」仕事かなあ。
今日は、残りたくないんだけど。

「じゃ、すぐに支度するから、そこで待っててくれ」

支度するって、外に出るってことですよね?仕事いいんですか?

少しって、どのくらいの時間でしょうか?


「何?」
課長が、振り返って私の顔を見る。
いつも通り無表情に見える端正な顔。

用事がありますって言えないよなあ。

「何でもありません」

私と課長が話してるのを見て、国崎君が近づいてきた。

私の顔の様子をうかがいながら、
「どうかしたの?」と声をかけてくれた。


「課長に、これから話があるって言われただけ。大丈夫だよ」

これから、怒られるんじゃないですよね?
私は課長の顔を見たけれど、やっぱり表情に変わりはない。


「仕事のこと?だったら、俺、そばにいた方がよくない?」
国崎君が、私と課長の両方の顔を見る。

「わからないけど。大丈夫だと思う。来てくれって言われただけだから」

「そう、困ったことがあったら呼んでよ……というか、やっぱり、俺も一緒に行くわ」
課長が反応した。

「国崎、悪いが用事があるのは、栗原だけだ。若干、個人的な話になるから、今日は遠慮してくれ」

「何ですか、それ」国崎君が納得できないって顔してる。

「俺からは、言わない。次の日にでも、直接栗原から聞け」

「はい」

「じゃあ、行こうか」
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