あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
課長は、あおるみたいにビールを飲み干した。
「それにしても、総務の方は、彼が自分の希望を常に表に出していたのに、社員の声が上まで上がってこなかった。
その点は改善の余地がある。やっぱり直属の上司に提出させるのは、よくないな」
「そうですね」
課長は、私が頷くのをゆっくり見守った。
「俺も、人のことをとやかく言えない。
君に文句だけ言って、ちゃんと君の能力を見ようとはしなかった。
自分に非があれば、部下にだって謝る。
このままでは、口だけの人間になってしまうからな」
こんなにエリートで、こんなにプライドの高い人が、頭を下げてくれるなんて信じられないことのように思えた。
こんなふうに部下を大切にする人って、すごいなと思った。
「ところで、国崎君とは、仲なおりしたんだな。初日の彼の剣幕からすると、想像できないが」
本当に、最初は、ひどく睨まれました。
「たまたまお昼を一緒に食べていて、人事課に移りたいって聞いて、課長からの宿題を見せたら、良く知ってたから、教えてもらうように頼んだんです」
「そっか……」
「はい。えっと、まずかったですか?」
「いいや。分からなかったら俺が直にレクチャーしようと思ってただけだ。だから、手間が省けたかな」