あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「栗原?」
パブロフの犬のごとく、私の耳は、彼の声を聞き分ける。

「はい!」

私は、ばね仕掛けのおもちゃみたいに、飛び上がるように椅子から立ち上がった。

どうして、こんなに課長に反応するのだろう。


何かトラブルかと思って、さっと課長が顔を上げる。
そして、まずいことにあの、まばたきしない目で見る。

「さっきから、呼びかけているんだが、聞こえてるか?」

声を発する時、 喉仏がこくりって動く。


そして、その薄い唇。
その、柔らかい声を発するために動いている。


「すみません」ぼうっとしてました。

そのすっとした鼻に添える、筋っぽくてきれいな指に目が行ってしまう。


何でもありません。
何も隠してませんから、作業を続けて下さい。

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