あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

いま気が付いたけど、課長の目っていろんな感情が読み取れる。

思ったより温かみのある視線を送ったりする。
いつもッてわけじゃないけど。
よく見てると、分かるようになった。

彼の視線は、いろんな事情を読み取ろうと、様々な場所に視線を送って、何もヒントがないと思うと、今度は、まっすぐ私の方を見て、相手の瞳の中から何かを読み取ろうとする。

ずっと見てると、そんな、一件、無駄な行動に見える彼の仕草が、とでも意味がある気がしてくる。

この人は、あまりしゃべらないし、表情も変わらなく見えるけど、こうしてよく見ていると、彼の心の動きが分かるようになった。

本当にいろんなことを気にしているのだ。


仕事の事、部下の事、同僚の事。

すべてに目を配らせて、問題ないか瞬時にチェックする。

彼の正確な目が、私に何か問題が起こったと判断したみたいだ。

ロックオンされたみたいに、まっすぐ見つめてくる。

お願いです。
そんなふうに、まっすぐ私を見ないでください。

クールな視線で射貫かれると、どうにかなってしまいます。



恐ろしくて、今まで、できるだけ正面から見るのを避けていたのだけれど。

今は、彼が今、その明晰な頭の中で何を考えているのか、どう感じているのか、少しでも知りたくて彼の瞳を見返してしまう。


とうとう彼が、分からん、らちが明かないという顔して近づいてきた。

そして、私の肩に手で触れた。

「おい。本当に大丈夫か?具合でも悪いんじゃないのか?」


「うっ……」
ピクンと体が反応し、彼の手が触れたところが熱くなる。


「ごめんなさい、課長。ちょっと席を外します」

いったいどうしたっていうんだろう。

私は、身震いしてその場を逃れた。

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