あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「いや、そんなわけにいかないです」

お店の人が遠慮して、手伝うという申し出を断った。

「遠慮できるほど余裕ないと思います。それに、料理が料理と飲み物が落ち着くまで」

「すみません。従業員が二人も休んじゃって、急だったんで、都合がつかなくって」

「わかった。それ二つともちょうだい」

特製サラダと若鶏の唐揚の大皿がカウンターに乗っている。
出来上がった料理の皿を取ってもらうように言う。

「ええっ?」

「一度に二つは持てるから。ほら、早くして」

「はい」

「ぐずぐずしてないでビール注ぐ手を休めないで。あなたは、とにかくビールを注いで。早くしないと上と下、両方からクレームになる」

「ええっ、はい。分かってます」

「これ置いたら、注文取って来て幹事の子に飲み物運んでもらうから」

「はい!」

部屋に戻って全部のテーブルをチェックした。やっぱり、飲み物も料理も足りてない。

体が勝手に動いてしまう。


各テーブルにいきわたるように、何度か往復して、均等に料理を並べた。

手が空いたら、幹事の子二人を呼び、店の状態を話してお酒を運んでもらうように頼む。

「えっと、すみません。人事の新任の方ですよね?歓迎される方なのにすみません」

「大丈夫よ。気にしないで。それより、早く乾杯できる体制を整えなきゃ」

「はい。早速、ビール取りに行ってきます」

「私は、注文取って行くから。落ち着くまでそうしてあげて」

「はい」
< 94 / 240 >

この作品をシェア

pagetop