あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
そんなふうにやっと席に落ち着いた頃、入り口の方が騒がしくなった。

課長がようやく入って来たみたいだ。

さっと部屋の中を見回した課長と目が合う。

やあ、っていうように、彼はニコッと笑った。

課長が?笑った?

彼は、まっすぐこっちへ向かってくる。

途中で何人も彼を引き留めようとして話しかけるから、それにも応じてあげて、全然前に進まない。

中には、課長の腕を引っ張ってる女の子もいる。
隣に座ってもらうために、席空けておいたのに。と来たばかりの彼に甘えている。

「申し訳ない。後でお邪魔するよ。先に自分の部下をねぎらわないとね」
そう言って、彼は適当に軽く笑って、寄って来る人をかわしてくる。

私ともう一度目が合う。そっちへ行くからと目で合図してくれる。

私は、注文を受けたビールジョッキを手にしていた。

それに気が付いて、何やってるの?と態度で示してくれる。

普段見せないような、ラフな態度で答えてくれる。

私にそう言ってた誠実な瞳が、まっすぐ見つめてくる。






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