あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「おお、やっと来た!!」
国崎君が手招きをして課長を呼んだ。
私も、課長と同じタイミングで席に着いた。
乾杯と二人でビールを傾け、課長と同箸袋から箸を抜く。
「あれ、栗原どこか行ってた?今来たの?」
課長が、すぐに気づいてくれた。
私がまだ、何も食べていない事に気が付いてくれたのだ。
本当に、些細なことだ。
気を付けていないと、見逃してしまうほど。
課長は、私だけじゃなく、自分の部下全員のことを気にかけてる。
課長が、こんなにも、周りの人に気を配ってるのに驚いた。
本当に、どうでもいいことなのによく見てる。
「ずっと店の中にいましたけど、落ち着いて席につけたのは、今、ようやくです。だから、今、来たみたみたいなもんですね」
ビールのジョッキを手にしたまま、課長が私の言ったことを頭の中で考えてるのが分かる。
「どういうこと?」
降参したみたいだ。
興味を引かれたように私の顔をじっと見てる。
「どういうことって。えっと……
どうでもいいですね。たいしたこと、してないですから」
彼が、体をこっちに向け真剣な表情になる。
「そんなことはないだろう。君は最初からここにいたんだろう?それなのに、どうして飲まず食わずにいたの?いったい何してたんだ?」
課長に今日、1日が終わるまで、私のことを考えて欲しくて、質問の答えをはぐらかす。
「確かに、よく考えると変な行動ですね」
凄いなあ。
この人、1日中推理小説読んでるみたいに、ずっと考えてるんだ。
私は課長の分析力に頷く。
この人面白いと思う。