あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
キッチリセットされ明るめの髪。
メタルフレームのメガネは、いくつか形の違うものを日によってかけ替えている。
彼はじっくり考えてからものをいうタイプで、思い付きでホイホイ話してしまう私とはまるで逆だ。
「じゃあ、課長?私が何をしてたのか考えていてください」
そうしているうちに、私に興味を持ってください。
「んん?」
言われなくても、答えを当てようといろいろ考えてたみたいだ。
「別に、用事があたのか?」
「いいえ。違います」
課長が、あれこれ考えて私に質問をしてくる。
「言っときますけど、外には出ていませんって。店の中にずっといました」
「じゃあ、店の中で誰かと会ってたのか?面白くない答えだな。くだらん、もうやめよう」
「降参ですか?」
「わからんよ、そんなもの」
「やっぱり、降参じゃないですか?」
私は、意地悪く言う。
「いや、降参なんかしない」
課長も向きになる。
特別な感情が、課長にあるわけではない。
課長はただ、会話を楽しんでるだけ。
こんなふうに、私の方に体を近づけて軽く触れあってるのも、好きとかそういうのとは違う気がする。
この人は見た目がいいし、雰囲気がある。
それで、じっと見てしまうだけで、好きだからそうしてるんじゃない。
そうだったらずいぶん気が楽なのにな。
上司のことが好きで、気になって仕方がないだなんて、そんな面倒なこと、できれば避けて通りたい。