陽だまりの先で咲く
フルーツミックス ・オレ
学校帰りの帰り道で、変なものを見つけてしまった。
できれば、素通りするのが一番なのかもしれない。
人が道路の端で、うずくまっている。
「うぅー。うーーん。」
唸っているんですけど。すでに、怖いんですけど。
こういう時に限って大人の人はこの道を通らないのだから。
仕方なく、うずくまっている人に声をかけた。
「あのー。どうしたんですか?」
その人は、はっとしたように私を見た。
たぶん、高校生ぐらい?
髪が少し明るい。染めてんのかな?服は制服―――というか、私と同じ高校だ。
「お腹がすいて死ぬ・・・・・・」
なんだか、馬鹿みたいな理由だな。おい。
私は、通学カバンの中に入っていた菓子パンを出した。
「よければ食べますか?」
コンビニで新発売されていたパイナップルメロンパン。つい買ってしまったけどまあ、あげてもいいかなと思った。
「えっー!いいの。こんな俺に。俺のために」
その男は、感激をして目をうるませている。
「あ、はい。どうぞ。」
私が少し引き気味で言い終わるか終わらないかの勢いで、男は袋を一気に開け、メロンパンを食べた。
「はぁー。ありがとう!でも、あんまり美味しくはなかったよ。やっぱり、メロンとパイナップルがあわないのかな?」
何なんだこいつは。生き返った瞬間(注死んでません)いきなりムカつくやつになったな。
「あはは、ごめんなさい。そんなものしか持っていなくて。では、さよなら」
めんどくさいから、速やかに立ち去ろうと思った。
そしたら、腕をつかまれた。
いや、もういいから離せっ!
「あのー。なにか?」
私は、精一杯の営業者的スマイルで対応する。
「君、そのセーラー服、将門高だよね?」
「そうですけど」
よく見ると、性格抜きにしたらきっとモテるんだろうなという顔をしてる。
明るい髪の色に合ってる。
雰囲気は、そう。チャラ男。
「スカーフの色からして、一年だよね?」
「そうですね。」
私の通う将門高校では、女子はスカーフ。 男子はネクタイが、学年事に色分けされている。
一年が、赤。二年が、青。三年が緑。
と、いうように。
チャラ男のネクタイは・・・・・・つけてねぇ。ふざけんなよ、校則的にダメだろ。
「あっ、見てわかるように俺も将門高なんだ。」
「そうみたいですねぇ」
早く立ち去りたい。
「君、何組?というか、名前は?」
なぜ、チャラ男なんぞに教えなければならんのじゃー。
「えーと。一年A組の櫻井えみ。です。」
「へー、櫻井えみ。えみて、笑うって書くの?」
「笑うじゃなくて、咲くって書きます」
「かわいい、名前だね。」
もう、いいから帰られせろ。
「ありがとうございます」
「俺は、二年C組の如月陽向。陽に向かうで書くんだ」
いらねーよ。おまえのじょうほうなんて!
て、あれ?如月陽向てあの、生徒会のお騒がせ会長?
「そう。ご存知かと思うけど生徒会長です」
でも、なんで生徒会長が行き倒れ?
「なんで、行き倒れていたかって?」
この人は、ほんとに何も言わなくても勝手に喋ってくれるな。
「まぁ、人生いろいろあるんだよ」
説明しないんですね。
「じゃあ、私これで。さよなら」
今度は、手をつかまれないように早歩きをした。
今日は、めんどくさいものに遭遇してしまった。
後ろの方で、行き倒れ会長が何か言っているが聞こえなかった振りをしよう。