隣の貴方は吸血鬼




翌日。

美波はバイトの準備をしていた。
土曜日なので、昼間から働けるのだ。


ピンポーン


「…?はぁい!!ちょっと待ってて下さい!!」
突然のチャイムに、慌てて服を着替えて玄関に出た。
覗き穴から確認すると、見かけない女性だった。
セールスには見えなかったので、ドアを開ける。

「はい?」
「はじめまして。昨日隣に引っ越してきた鬼塚と言います」
「あ、はじめまして。唐沢ですっ…よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。あぁこれ、引越し蕎麦です。よろしければ」

美波が挨拶をすると、女性は深々とお辞儀し、包装された箱を差し出した。

「わわ、ありがとうございますっ。わざわざこんな…」
めちゃめちゃ助かります、とは流石に言わなかったが。

良かった…と、美波は少し安心した。
こんなアパートに越してくるくらいだから、てっきりフリーターだかニートだかよく分からないような生活感のない男でも来ると思っていた。
偏見なのは分かっているのだが。

それが、こんなに若くて綺麗な女性が越してきたのだ。
どんな事情があるか知らないが、嬉しい。

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