隣の貴方は吸血鬼


「おーい、生きてるか?」
とうとう床に突っ伏したまま微動だにしなくなった恭平を、茜が足でつつきながら起こす。
「無理です死んでます」
「とっとと起きんかい!!」

そのまま、蹴り飛ばした。

「痛……ッ」
「…ま、仕方ない。今日は勘弁してやる。引越し当日だしな。その代わり、これ片付けろ」
「な…この箱全部かよ!?」
「嫌ならもうちょい頑張る?」
茜はえいっ、と十字架をつきつける。
「分かった分かった、やるからッやりますッ…や、やらせて下さい…」
「よろしい。さ・て・と…私は寝ようかしら」
「…どこで?」
室内は荷物や段ボールなど散乱しており、とてもじゃないが落ち着いては眠れない。

「………立って寝る」
「手伝え!!素直に!!」






薄っぺらい壁を隔てただけのアパートの隣室。
彼らの新しい生活は、まだ始まったばかりだ。


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