隣の貴方は吸血鬼
酒川菜々枝
斉藤佑香
彼女達は、高校に入った1年の時から仲良くなり、大体の生活を一緒に送っている。
強気の菜々枝におっとりとした佑香、サバサバした美波の組み合わせは大分異色だったようだが、そこそこ上手くやっている。
「まったく…知らないよ?先生3回も起こしてたんだから」
手製の弁当を開いて菜々枝が笑う。
「うう…何で起こしてくれなかったのよ…」
「先生があんだけ起こして起きないのに、私らが起こして起きる?」
「た…確かに…」
「うぅ…」
「美波ちゃん…バイト、減らしたら…?」
佑香が心配そうに顔を覗き込む。
そう、美波が授業中に寝てしまうのは決して授業が退屈な訳ではなく、日々のバイトが原因だった。
放課後から高校生の労働の限界である10時まで、ずっと働いているのだ。
働いて、帰宅。そして勉強をしたり洗濯したりしているうちに、12時は廻ってしまう。
いくら勤務先であるパン屋と古本屋がのんびりしているとは言え、毎日では体がもたない。