それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
 ムッカとカルマンはもみ合い、ジュジュは絡み合ってる二人とマスカートを交互に見てはハラハラしていた。

「と、とにかくだ、賛成ってことなんだ。なあ、バルジ」

 ムッカは事を穏便に済まそうと、助けを乞うようにバルジに同意を求めた。

「ああ、それでいい」

 バルジが低い声でぼそりと答える。そして歓迎の意味を込め、自分の腕を伸ばし、手のひらを宙に掲げてモンモンシューに向けた。

 モンモンシューはすぐさまバルジの元に飛んで行き、遠慮なくバルジの手に止まって頭をこすりつけ愛想を振りまいた。

 モンモンシューのその動作にバルジは目を細めて喜び、ジュジュにも優しく微笑みを向けた。

 ジュジュは肩の力が抜けたようにほっとして、難関が一つ過ぎ去ったことを実感した。

「もう、ムッカ、いい加減にやめてよ」

 押さえられていたムッカの手をやっとの思いで払い、カルマンは不快な表情で口を何度も拭っていた。

「お前が、変なこと口走るからだろうが」

 ムッカはカルマンに肘鉄を食らわせ、牽制する。

 二人が不満たっぷりにまだ何かを言い合っているとき、マスカートはコホンと喉を鳴らして注目を集めた。

「二人とも、もういい。私は大丈夫だ。とにかくだ、私達は全て賛成だが、それよりもリーフがなんていうかだ」

「そういえば、リーフっていつ帰って来るの?」

 カルマンが訊いたが、誰も知っているものは居なかった。

「だけど、一体どこへ行ったんだ?」

 疑問がムッカの口から漏れた。

 皆、暫く考えるも、結局は首を傾げるか、横に振るかの動作をするだけだった。

「あの、リーフってどういう方なんですか?」

 ジュジュは暖炉の上に飾られている肖像画を見つめながら質問する。

 そこにある肖像画のリーフは精悍な顔つきで、キリリとした表情だった。

 隙がないかしこまった表情は肖像画用に態と作っているのだろうが、極端に目元が厳しく見える。

 その肖像画だけでは、一概にどういう人物か読み取れないが、屋敷の主だけあり、知性的で威厳は溢れていた。

 少し怖いようにも見えるが、笑えばまた違った印象にもなるだけに、その肖像画だけでイメージを固めたくなかった。

 自分を助けてくれたかもしれない人物。

 あやふやな記憶と、そうであって欲しい期待。

 複雑な感情が交差しては、ジュジュは不安な眼差しで見つめていた。
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