それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
10
「マスカートどうした?」

 ムッカに声を掛けられ、マスカートはビクッと体を飛び跳ねさせた。

 ムッカを一度見てから震えながら前方を指差し、声が喉に奥に引っかかったような喘ぎ声を微かに出して目を見開き示唆する。

 そのマスカートの様子に、ムッカもカルマンもようやく何事か察しがついた。

「オーガか」

 ムッカは小さく呟き、喉をゴクリとならした。

 マスカートは軽く首を縦に振りそれに答えると、カルマンは腰の剣に手を掛けた。

「カルマン、剣に手を掛けるのはよせ、ジュジュを怖がらしてしまう。ここはさりげなく、屋敷に引き返そう。ゆっくり歩いて刺激しなければ、向こうも相手にしないだろう」

「でも一体どこにいるの? マスカートはほんとにオーガを見たの?」

「ああ、黒い影がカサカサと音を立てて動くのを見た。そして微かな唸り声も聞こえた。向こうも隠れてかなり警戒している様子だ」

「だけど、不思議だ。今までオーガはこの辺りをうろついた事がない。ここは街に近い。オーガも分かってるはずだ」

 ムッカが怪訝な顔つきをした。

「そんなのオーガの勝手でしょ。僕たちがそう思いこんでて、今まで偶然に出会わなかっただけなんじゃないの?」

「カルマンの言う通りかもしれない。私達はかなり油断していたんだろう」

「だけどさ、俺達、何も持ってないじゃないか。それに何も荒らしてもない。こんな街の麓に近い場所にオーガが何で出てくるんだ。なんかおかしいって。あいつの縄張りはもっと奥深くじゃないか。俺達は大体の習性を把握してるから、こんな危ない商売でも危険をかわしてできるというのに」

「ムッカは何をごちゃごちゃいってるんだよ。もしかして怖いの?」

「うるさい、カルマン!」

「ムッカの方が、よっぽどうるさいけど」

「二人ともこんな時に言い合いするなって!」

「ねぇ、皆どうしたの?」

 緊張していた三人の後ろに、いつの間にかジュジュが近づいてきて、声を掛けた。

 三人はびっくりして「わぁ!」と驚いて飛び跳ねてしまった。

「えっ!?」

 ジュジュもそれにびっくりして身を怯ませ、肩に止まっていたモンモンシューも突然慌てて飛び回った。

「あっ、チビ、動くんじゃない」

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