それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
 長身で髪の長い男性。

 至近距離で向かい合って見た時、その顔を見てジュジュは既視感を覚えた。

「あなたは?」

「私はセイボルだ」

「セイボル……」

 どこかで聞いたことのある名前。

 ジュジュはまじまじと見つめ、目をパチクリした。

 どうしても知っているとしか思えない感覚が現れるのに、記憶とまだ一致しない。

「ジュジュ王女、今すぐこの森から出て城に帰るんだ」

「えっ、どうして私の事を? あなたは一体誰?」

「私の事はどうでもいい。とにかく城にお送りしよう」

「あの、待って下さい。今はまだ帰りたくないんです。どうしてもやらなければならないことがあって、それが終わるまで私はまだ帰れません」

「しかし、この森は安全ではない。ジュジュ王女のいるような場所では……」

「あなたは城の者に私を探し出す様に頼まれたのですか?」

「まあ、そんなところだが」

 自分の意志も入っていたが、城に従事している姉のエボニーに探し出すよう言われた分、嘘は言っていない。

「どうか、私がここに居る事は暫く黙ってて下さい。お願いします。用が済めば必ず城に戻りますから。もし願いを聞いて下さるなら、あとで必ずお礼をします」

「お礼?」

「はい、あなたが望むものならなんでも差し上げます」

「なんでも?」

「何がお望みですか?」

「望み…… いや、そ、それは」

 セイボルは言おうか言わないでおこうか、少し葛藤していた。

 自分の望みは、ジュジュそのもの。

 そんな事言えば、ドン引きするだろうと、一人で悶々として固まってしまった。

 そこまで悪役にはなれない自分の性格がもどかしい。

 一応魔王なのに──、と一人で突込みまで入れていた。

 目の前で、セイボルがお礼について真剣に検討していると思い、ジュジュはそれを好意的に解釈した。

「それじゃ、黙っててくれますね?」

「えっ、あっ、ああ……」

 セイボルが我に返ったとき、つい弾みで返事してしまった。

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