それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
 ジュジュは、満面の笑みを浮かべ、喜び勇んでセイボルに抱きついていた。

 どこかで見た事があると思った親しみのせいで、無意識に出てしまった行動だった。

 素直に抱きつかれ、セイボルはドキッとしてしまう。

 ジュジュ王女を手に入れるように姉のエボニーから言われてるが、実のところジュジュはセイボルの好みだった。

 だからこそ手に入れたいと強く願ってしまう。

 セイボルはこの時、飾らない自分の素の姿をさらけ出して、ドキドキとしていた。

 人には魔王と呼ばれているが、実際のところ、その名称はセイボルにとって虎の威を借る狐くらいのものとしか思っていない。

 黒魔術の力は本物でも、自分が力を誇示して冷淡になれるものではないくらい充分承知だった。

 しかし、侯爵の地位を継いでからは、馬鹿にされないためにも、セイボルは威勢を張っている。

 それが時には負担であっても。

「わ、わかった。ジュジュ王女の仰せのままに」

「ありがとう。セイボル。お礼はまた後でゆっくりと考えて決めて下さい。それと、私が天空の国の王女だという事はどうか秘密にお願いします。くれぐれも王女とは人前で呼ばないで下さい」

「ああ」

 ジュジュの笑顔は間近で見ると一層可愛くて、セイボルは身悶えしてしまう。

 自分とは違い、逞しい行動力を持ち、明るくバイタリティな性格も魅力的だった。

 そして飾らなくてもそこに気品が備わり、自然で美しいと思える女性だった。

 この時、セイボルは一層ジュジュに惚れてしまい、心の純粋さがでている輝いた緑の目に吸い込まれそうになりながら見入っていた。

 ジュジュも同じようにセイボルをしっかりと見つめているが、やがて頭の中の靄が消えゆき、その後ハッと疑問が解けた。

「あなたは……」

 ジュジュが突然戸惑って、落ち着かないでいる。

 セイボルも敏感にその様子を感じ取った。

 ジュジュが何か言おうと口を開きかけた時、遠くから自分の名前を呼ぶ声がする。

 その声は段々強まると共に、必死さが伝わってきた。

 マスカート、カルマン、ムッカがジュジュが居なくなった事に気がついて、死に物狂いで探していた。

 近づいてくる男達と対面することを覚悟するように、セイボルの体に力が入り、顔つきが引き締まった。

 ジュジュはそのセイボルのかしこまった表情を見て、益々戸惑いを覚えていた。
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