それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?

 リーフにジュジュとの密会を見られていた。

 馬鹿丸出しに、魔術を使ってるところを全部見られていたらかなり恥かしい。

 リーフが何を思って目の前に立っているのか、暗闇でははっきりと姿は見えないが、自分と似ているのはよくわかる。

 セイボルはリーフに見つめられてジリジリと追い詰められる圧迫を感じた。

「まあいい、今宵は美しい月夜の晩だ。その月に見せられる気持ちもわからないでもない。この私もそうだ。だが、派手な行動はこの屋敷の近くで取るな」

「今は魔術の事で何も言われたくない」

「あれが魔術だと。子供だましに過ぎない。セイボルは発想力が乏しすぎて、折角の力も生かしきれてないようだ」

 リーフは冷たく鼻で笑う。

「私の魔術はどうでもいい。ところで、一つ訊きたいことがある。最近変な魔術を使ってないか?」

「この私がか? さあどうだろうな。一応この屋敷に住むものは『リーフは魔術が使えない』という事を信じてるんじゃなかったのか。色々とフリをするのは大変だ。なあ、セイボル」

 リーフは冷たい眼差しをセイボルに向けた。

 その目つきはセイボルとそっくりだった。

「全てはあんたが企んだことだ。私はただ巻き込まれた。いつまでこんなことを続けるつもりだ」

「何を言うかと思えば…… 自分に都合が悪くなると私を責めるのか。まあいいだろう。ジュジュが屋敷に来てから空気が変わり、面倒臭い事も増えてしまった。私とてこんな事になるとは思わなかった。皮肉なことにジュジュはリーフとセイボルどちらにも興味を持っている様子だ。さて、一体どっちを好きになるのだろうか。それともどっちも振られるかもだが……」

「もちろん『セイボル』の方を好きになる」

「そうか、ならその反対の『リーフ』に私は掛けてやろう」

「ズルはするなよ。ジュジュには魔術は一切掛からない」

「魔術など一時の対策に過ぎないものだ。掛かろうが、掛からまいが、そんなのどうでもいい。それよりもセイボルのやり方を見せてもらおう。まあ、せいぜい頑張るんだな、セイボル」

 一度去りかけたが、リーフは思い出したように再び振り返る。

「そうそう、明日、といってももう今日になるか。マーカスが屋敷にやってくる。久しぶりのチェス対決になる。邪魔をするなよ」

 リーフは今度こそ暗闇に消えていった。

 マーカスはセイボルも知る人物だが、リーフと仲がよい友達で、チェス仲間だった。

 マーカスに会えばややこしくなるので、セイボルは絶対に寄り付かない。

 マーカスとは出会うことがないように回避するだけのことだった。

 それにしても、リーフの言い方は一々刺があった。

 それは今に始まったことではない。

 昔から厳しく、意地悪な所があるリーフがセイボルは苦手だった。

 しかし、親族であり、リーフを無視する事はできず、それよりもいつも丸め込まれてリーフに踊らされてしまう。

 魔王と呼ばれても嬉しくないのは、自分が弱く頼りない事をよく知ってるからだった。
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