それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
 自分の屋敷の周辺では、侯爵という地位があるからまだ面と向かって馬鹿にされないが、黒魔術が怖いものと誤解する輩は、呪われている家系だと陰で噂する。

 魔術が使えない一般のものには、魔術師は驚異的なものではあるが、人々の助けになって力を貸す事もあるから、感じ方は人それぞれだ。

 ジュジュはセイボルを恐れなかった。

 そして何より、ジュジュは魔術を弾く。

 魔術がいかに無意味かをわからせてくれる稀な人間。

 セイボルはそういう人間と添い遂げたい。

 ジュジュに会えば会うほど、話せば話すほど、セイボルは益々夢中になっていく。

 もしジュジュがリーフを好きになってしまったら──

 セイボルは強く首を横にふる。

 そんな事はあってはならない。

 ジュジュが眠る屋敷を見つめ、セイボルはジュジュへの思いを募らせていた。



 夜が明け、時々あくびをしながら、ジュジュは朝食の準備をしていた。

 前夜遅くにセイボルが現れ、美しい幻想を見せてくれたことを思い出し、セイボルの子供みたいな行動がこの時になっておかしく、クスッと笑ってしまう。

 自分の気を惹くために、破れかぶれで、銀の粉を振りまくセイボルは、魔王と呼ばれるには全く似つかわしくなかった。

 だけどそのギャップが楽しくて、そして可愛くて、ジュジュの心にセイボルが入り込む。

 目許はキリリと涼しいが、クスクスと笑うと細まって優しくなる。

 ストレートに愛を囁き、かっこつけて迫られるよりもとても心安らいで好感が持てる。

 寝不足で眠いが、ジュジュは朝から気分がよく、鼻歌交じりに卵を軽やかに割って、ボールにぽとりと落としていた。

「なんだか楽しそうだ」

 後ろから声を掛けられ、てっきりいつもの四人の男達の誰かかと思い、ジュジュは陽気に振り向き元気に「おはよう」と返事した。

 その振り向いた先には、あまり顔を合わすことがないリーフが立っていた。
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