それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
 ジュジュはドキッとして、持っていた卵を落としそうになり慌ててしまった。

「別に驚かすつもりはなかった。昨晩、負傷した客人が沢山やってきたから、少し気になって覗きに来ただけだ。そしたら台所から鼻歌が聞こえたから声をかけたまでだ」

「は、はい」

 ジュジュは緊張してしまう。

 髪は短いが、やはりセイボルと同じ顔だとまた思ってしまった。

「ここの暮らしにはなれたのか?」

「はい。お蔭様で、ありがとうございます」

「そっか。それならいい」

 ジュジュは緊張して、体を強張らせていた。

「どうした、私が怖いのか?」

「いえ、そ、そんな事は」

「しかし、会えばいつも顔をまじまじと見つめてくれるもんだな。もしかしてセイボルと比べているのか?」

 同じような台詞をまた聞いた。

 セイボルになら、素直に自分が感じたことを言える。

 だがリーフの前では思うように話せなかった。

 ひたすら威圧感を感じ、体がピンと張ったように神経が高ぶっている。

 しかし、ドルーに包丁で脅され、気が抜けて泣いてしまったあの日、リーフはジュジュを慰めようと抱きしめた。

 そのことは頭から離れないでいた。

 まだ知らないリーフの奥底な内面。

 そこには優しさが隠れている。

 ジュジュはリーフに会えばドキドキとしてしまう。

 それは危険な信号としてなのか、それとも──。

「いえ、そんなことは……」

 咄嗟に嘘を吐いた。

 本当はそっくりだと、観察せずにはいられない。

 そして興味を持ってる事も悟られたくなかった。

「まあいい、誰が見てもそっくりなことには変わりない」

 リーフはジュジュに自分の顔を近づける。

「穴が開くほど見つめるがいい。それでジュジュはどっちが好みだ?」

 ジュジュは後ずさりして怯むが、リーフも追いかけるようにまた顔を近づける。

 近づきすぎてピントが合わないくらいだった。

 ジュジュは確実に避けようと、後ろに反れていた。

 まるでアルファベットの『C』の形のように。

 リーフは露骨に反れているジュジュがおかしくて、口許の端を斜めに上げて笑った。

「私は、人の嫌がることをするのがどうも好きみたいだ」

 リーフは独りよがりに楽しんでいた。

 何が面白いのかジュジュにはさっぱり判らないが、セイボルとは違って、素直になれない捻くれた部分をリーフから感じてしまう。

「ジュジュは苛めがいがある」

 とても上機嫌に、リーフは台所から去っていった。

 何がしたかったのだろうと、ジュジュは首を傾げる。

 しかし胸はドキドキとして、卵を持つ手が震えていた。
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