それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
「そうか、もし欲しいものがあれば、リストにして教えてくれ。こっちもあんた達のお蔭で商売が出来るというもんだ。何が欲しいと判っていたら、それを注文客に勧められるからな」

「僕のお蔭で、商売繁盛だね」

「ああ、カルマンは天才だよ」

 ジュジュには話がよくわからないで、きょとんとしていると、マスカートが説明した。

「カルマンはこの御者を屋敷への配達係として窓口を作らせ、お礼の品を配達する仕事を受け持ってもらってる。この森に迷い込んで助けて貰った人達はこの御者に荷物を運んでもらっている」

 要するに街でお礼品を受け取る代理係である。

 カルマンのアイデアのお蔭で、こうやって街からスムーズに品物が届くので、そこは有難い。

 しかし、商売化してしまった事は少し恥かしく、マスカートは事実だけ伝えると、また荷物を持ってそそくさと屋敷の中に入っていった。

「ところで、カルマン。例のものはあるか?」

「ああ、あれか。今すぐには用意できないな」

「また午後にマーカスを迎えに来るから、その時にはどうだ?」

「うん、それならなんとかなると思う。じゃあ用意しておくね」

 荷物を届けるだけがこの御者の仕事じゃなく、カルマンにも個人的に用事があるようだった。

 よくよく考えれば、リスクを犯してこの森の中に敢えて入り込むには、それなりの理由がなければ出来ないことだろう。

 ジュジュは聞かなかったフリをしていたが、カルマンはきっとこの森で取れたものを密売、または横流しでもするようにこの男に渡しているような気がした。

 それは何かわからないが、カルマンが明るくあっけらかんとしている事で大したことではないようにも思えた。

 積荷が全て降ろされ、そして負傷者達は馬車に乗り込んだ。

 マスカート、そしてムッカも一緒に便乗する。

 ジュジュに厚くお礼をいいながら、負傷者達は見えなくなるまで手を振って去っていった。

「さあて、掃除しなくっちゃ」

 ジュジュが気合を入れていると、カルマンが森の中へ一人で入っていった。

「どこ行くのカルマン?」

「森の巡回」

「えっ、一人で?」

「うん、バルジはマーカスが来てる時は屋敷を離れないんだ。一応この屋敷の部外者だし、リーフに何かあったら困るから待機してる。僕は他にやることないからね。掃除なんていやだし」

 最後にポロッと本音が出ていた。

 どうやらジュジュの仕事を手伝いたくないらしい。

 逃げた。

 カルマンらしいと、ジュジュは笑って見送った。

「私もさっさと済ませて、後はのんびりしなくっちゃ」

 ジュジュが屋敷に入っていく。

 その姿はセイボルがしっかり木の陰に隠れて見ていた。

 ジュジュの仕事が早く終わるのを願って──。
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