それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?
「ちょっとぉ、助けたのに文句言わないでくれるかな。僕の趣味の場所なの。とにかくその傷は僕が治してあげるから。それと、はいこれ、食べていいよ」

 非常食の干し肉と水を手渡され、ラジーはそれを見ると一目散にむさぼりついた。

「あんた医者なのか?」

 薬草となりそうな様々な植物やドライフラワーが、天井からぶら下げられているのを見て、ラジーは訊いた。

 その他にも書籍、見かけない器具や鉱石、小動物の標本など、所狭しと置かれていた。

 目玉や何の臓器が分からないものも、怪しげに瓶につめられている。

「科学者の方だけどね。この森について色々研究してるの。ここは自然の宝庫だからね」

「なるほどそういう意味での宝ってことか」

 オーガに襲われてから、ラジーはこの森のお宝の事には興味をなくしていた。

 カルマンはラジーが受けた傷口を観察し、薬の調合を始めた。

 薬草を手にして、すりつぶしていく。

「あまり大した怪我じゃないね。こんなの、この薬草塗ったらすぐ治るよ。ついでに体の回復力を高める薬も飲めばあっという間に元気になるよ」

 乱暴に薬を傷口にすり込むと、ラジーはそれが沁みて顔を歪めていた。

「今日はここで充分休むといい。僕の他に誰も来ないからゆっくりできるよ」

「ありがとう。ところで、俺は御礼に何をすればいいんだ?」

「それは落ち着いてからでいいよ」

 カルマンの何かを企んだ笑みが顔に宿る。

 ラジーは何も気付かず、助けて貰ったことでの感謝の気持ちで一杯だった。

「後でムッカにも謝れるだろうか」

「案外と単純なんだね。そんな風に殊勝になったらつまらないな。もっと意地張りなよ」

「えっ?」

「ラジーは悪者になった方が似合うと思うな」

 ラジーはカルマンをじっと見つめた。

「あんた、相当おかしい人だろ」

「うん、よく言われる。でも気にしたことないんだ。だって僕は将来上に立つ人間だからね。一々気にしてたらやってられないからね」

 ラジーは困惑しながら、渡された薬を飲んで水で喉に流し込んでいた。
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