陰にて光咲く



こんなこと血の通った人間のすることじゃない。


普通の人間が薬を与えられて売られるなんて、そんなこと残酷すぎる。


アズマは成瀬から小袋を受け取れずにいた。


「なんだアズマ、できないのか?」


「…俺にはできません」


そう言うと、成瀬は目の前で小袋をひらひらと揺らした。


「そうか、なら仕方ねーな。お前があいつの代わりにマワされることになっても…」


背筋に悪感が走る。


周りを見渡すと成瀬の手下たちはみんなこの光景が当然のようで、アズマが男にキメるのを待っていた。


押さえつけられた男はおびえた目でアズマを見ている。


助けを求めている目…


こんなこと俺にはできない。


人に強引に薬をやるなんて、できるわけない。


でもやらなければ、俺が代わりに売りつけられる。



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