陰にて光咲く



「どーすんだ?やるのかやらねーのか⁉︎」


ドスのきいた成瀬の怒鳴り声に恐怖を感じ、震える手で薬を受け取ってしまった。


「そう。それでいいんだよ」


そして男に近寄り、成瀬の指示に従った。


従うしか…なかった。




それからずっとアズマは、脅されながら成瀬の指示に従っていた。


嫌がりながら売られていく人たちを、見て見ぬふりしかできない。


自分が売られるの嫌だからって人に薬をキメるなんて、残酷だ。


こんな仕事をずっとやり続けるわけにはいかない。


いつしかアズマは成瀬のグループから抜けたいと思うようになった。


「成瀬さん・・俺もう薬やめます。だからこの仕事もやめます。すみません、抜けさせて下さい」


これ以上仕事を続けられなくなったアズマは、成瀬に頭をさげて頼み込んだ。


この仕事を続けるくらいなら薬をやめたほうがマシだった。


最初、無表情で聞いていた成瀬はしばらくして笑い出した。


「おいおいアズマ。頼み込む時の態度違うんじゃねーのか?」


成瀬はアズマの頭をポンポンと叩いた。


「人に何か頼む時は土下座だろ?」


屈辱を感じた。


けど、やめるためには成瀬の言う通りにしなければいけない。



< 127 / 211 >

この作品をシェア

pagetop