陰にて光咲く



受付カウンターの前にあった灰皿は、ヨースケの吸い殻で山をつくっていた。


ヨースケは6本目のたばこをくわえていて、それももう短くなっている。


「それからも何回か見たんだよ、アズマがグループから抜けたいと頼んでるとこ。けど、その度に成瀬に刺されてたな」


今、バイト中だという事も忘れてヨースケの話を聞いていた。


途中で来た客の受付の内容もほとんど覚えていない。


そしてヨースケの話を聞いて、はっと気づいたことがある。


この前見たアズマの背中にあった傷跡…


あの傷は成瀬に刺された跡だったのか。


アズマは笑って冗談を言ってたけど、あの笑顔の裏にはアズマの心をえぐるような過去が隠されていたんだ。


「でも…」


俺はここで初めて口を挟んだ。


「でも話ではアズマは薬をやめようとしてたみたいですけど、俺の部屋でアズマも一緒にシンナーやってたんですよね?」


アズマが勝手に俺の部屋でシンナーやってたことを話した。


「ああ、あれか。まあ、それはそうなんだけどよ…」


ヨースケは吸い終えたたばこを灰皿に押し付けながら話した。


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