陰にて光咲く




最後まで口を挟まず、ヨースケの話を聞いていた。


仕事を中断していたことに気づき、手元の作業を進めながら話した。


「でも・・薬やってた奴のことですから、本当のところ何考えてんのかわからないですよ」


「お前から見たらそーかもしれないけど、俺はアズマのやってることは本心だと思う」


「どうしてですか?」


「一度お前とアズマが二人でいるところを見たことあるんだよ。二人でバイクに乗っていた時にな」


それって、焼肉屋で食い逃げした時だよな。


「その時のアズマ、すげーいい顔して笑ってたんだよ。俺が見たことないような心の底から楽しんでる笑顔でな」


それを聞いて、手元の作業が再び止まった。


「俺らといる時も一見笑っているように見えるけど、中身は冷たい。アズマはお前と会って、初めて居場所を見つけたんじゃねーかって感じんだよ」


< 137 / 211 >

この作品をシェア

pagetop