陰にて光咲く



翌日は小雨の雨がぱらついていた。


そんな中、傘もささずに渋谷の街中を歩いていた。


大勢の人が行き交う道で肩をぶつからせながら、前を歩く。


そして渋谷の賑やかな街から外れた、とある雑居ビルの前で立ち止まる。


ポケットから取り出した紙に書いていたのは、きのうヨースケから聞いた地図だった。


その地図とビルを交互に見る。


ここだ。


そのビルには地下への入口があって、階段が続いていた。


勇気を振り絞って、地下への階段を降りていく。


ヨースケから教えられたところは、成瀬の居場所だ。


もとのあじとは警察に見つかったせいで使えず、今はこのビルの地下にいるらしい。


薄暗い階段を降りていくと、分厚い扉がただずんでいた。


中からはロックのような音楽とリズム音が漏れてきている。


若者たちが愉快に踊っている姿が想像できた。


ここに入ってしまえば、二度とこちらの世界には戻ってこれない気がしてきた。



< 139 / 211 >

この作品をシェア

pagetop