陰にて光咲く
成瀬のそばまで近寄ると、成瀬が俺に気づいた。
「なんだ。誰だ君は?」
「アズマの知り合いの者なんですけど」
フロアに響く音楽に負けない大声で話す。
アズマと聞いたとたん、成瀬の眉がピクッと動いた。
「アズマ?へえ〜、あいつにもお友達がいたのか」
まるで見下したような言い方だ。
だがそれには反応せず、変わらない大声で話した。
「あんたに頼みがあります。アズマをグループから抜けさせてやってください」
「はあ?何言ってんだ」
「アズマはずっと脱退しようとしてたんですよね?なら辞めさせてやってください」
成瀬にアズマの脱退を頼むために、今日ここまで来たのだ。
ナイフで体を刺され、薬を辞めさせまいと無理やりシンナーを吸わされるようなところから、アズマは抜けたいと悲願しているのに聞き入れられないことが、何とも皮肉に思えた。
アズマはこんなところにいる必要はない。
成瀬はフッと笑った。
「あいつ、自分は身を隠しておいてお友達に頼みに行かせてんのか。臆病な奴」
成瀬はポケットからたばこを取り出して、その一本をくわえて火を付けた。