陰にて光咲く
「ああ、ごめん…」
「なんか相当疲れてるみたいだね。今コーヒー淹れるから待ってて」
さおりはキッチンへ向かい、コーヒーメーカーの準備を始めた。
いつも自分が淹れるコーヒーはインスタントだが、さおりの部屋に来た時だけ本格的なコーヒーが飲める。
香ばしい香りを嗅ぎながらアズマのことを考えていた時、右足のかかとがベッドの下にある何かに当たった。
ん、何だ?
不思議に思ってベッドの下を覗く。
その何かの正体はノートだった。
それを手に取る。
見たところ普通の大学ノートで、表紙には何も書かれてなかった。
開けるか迷ったが、目につかないベッドの下にあっただけに中身が気になる。
ちらっとキッチンにいるさおりを見たが、さおりは背を向けてコーヒーの作業をしているようだ。
俺は意を決して中を開いた。