陰にて光咲く
第十章 「決意」
さおりの部屋を飛び出して、アパートの前でタクシーを拾った。
「とりあえず埼玉の秩父まで行ってください!」
「秩父…ですか?」
「いいから急いで‼︎」
運転手は戸惑ってるようだったが、急いで車を走らせた。
早く行かなきゃアズマが…
出るわけないとわかっていながらも、アズマに電話をかける。
そうしてないと落ち着かない。
『おかけになった電話番号は現在使われておりません…』
「くそっ」
スマホを膝の上に叩きつける。
運転手はミラー越しに不審そうに見ていた。
電話が繋がらなくなったのっていつだっけ?
俺が赤月警察署で渡辺と話をしたあとにはもう繋がらなかった。
けっこう時間が経ってしまった。