陰にて光咲く
1時間半かけて、ようやく着いた。
もう辺りはすっかり暗くなってしまっている。
タクシーが停車したのは森の入口。
この森の奥に別荘があるはずだ。
「すみません、ちょっとここで待っててもらっていいですか?往復代ちゃんと払いますから」
タクシーの運転手にそう告げた。
「往復って…え、ここでですか?」
「すぐ戻ってきますんでお願いします!」
俺は運転手の返事を聞かず、ドアを閉めた。
必ず生きたアズマを助けて戻ってくる。
そして、森の中への道を歩き出した。
人の気配がない静かな森。
風で木の葉が揺れる音と自分の足音しか聞こえず、不気味さを感じた。
後ろから誰かがつけてきている…
そんな気さえしてきて、何度も後ろを振り返ってしまっていた。
早く森から抜け出すために早歩きで道を進んでいく。
しばらくして、青い屋根の建物が見えてきた。
その前には巨大な湖。
間違いない、ここだ…
この中にアズマはいる。